調査・質問内容

質問番号 0010006075
状態 受付済
質問日 2022/02/17

子供向けに昔話絵本を作成したいと考えている。昔話絵本の作成について書かれている資料はないか。また、再話の方法について知りたい。

図書館からの回答

回答状態 公開済
公開日 2023/03/17
関連質問番号

調査方法は以下のとおり。
・都立図書館蔵書検索や「国立国会図書館オンライン」(https://ndlonline.ndl.go.jp/)(最終検索日:2023年2月27日)をキーワード<昔話><絵本><再話>等を組み合わせて検索した。
・都立図書館蔵書検索を件名<絵本><民話>で検索した。
・昔話の再話者である瀬田貞二、松居直、松谷みよ子、小澤俊夫の著作を調査した。
資料1~21を紹介したところ、利用者は大変参考になった、とおっしゃっていた。

●昔話絵本の作成に関する資料
○図書
【昔話絵本について概説している資料】
資料1
p.1-129「昔話絵本の魅力」
・p.15-30「昔話の絵本表現について」
昔話が、テキストや絵本、アニメーションへと変容していく過程が整理されており、昔話の絵本化の問題点について記載されている。そのほか、赤羽末吉、瀬川康男、佐藤忠良、ホフマン、ラチョフ等の絵本について触れている。初出は『こどもとしょかん』13号p.2-11「昔話とその絵本表現」(注A)。

資料2
絵本の歴史を学ぶ入門書。
p.219-238「第11章 民話絵本」(齋木喜美子)
岩波書店、福音館書店、ポプラ社の民話絵本を例に、優れた民話絵本を創造することについて、戦後の出版状況を踏まえ、資料3(後述)や資料12(後述)の見解も紹介している。

【特定の絵本を中心に論じている資料】
資料3
p.29-71「三 ことばが語るものと絵が示すもの」
p.73-114「四 昔話絵本が昔話から奪うもの」
絵本『七羽のからす』(注1)を例に昔話のイメージと絵本の絵の対応について説明している。また、耳で昔話を聴いて思い浮かべるイメージと絵本の絵の食い違いの問題点が指摘されている。1981年に出版された『昔話を絵本にすること』(注B)の新装版。

資料1(前掲)
p.1-129「昔話絵本の魅力」
・p.49-79「『つるにょうぼう』の技と心」
赤羽末吉の絵本の表現方法について記載されている。初出は『JBBY』16号 p.21-24「赤羽末吉氏の絵本芸術―その生成と形象―」(注C)、『飛ぶ教室』1983年春季号 p.29-39「絵本を読む 赤羽末吉『つるにょうぼう』の手法」(注D)

資料4
p.231-285「第四章 絵本『ももたろう』の誕生」
絵本『ももたろう』(注2)の再話者、編集者の視点から、絵本『ももたろう』ができる過程について詳しく説明している。1978年に出版された『絵本をみる眼』(注E)の新装版。

資料5
p.51-77「四 一冊の絵本を形成する要素 『おおきなかぶ』を読む」
絵本『おおきなかぶ』(注3)を例に、絵の描かれ方について説明している。

資料6
p.139-174「六 名作絵本の背景を語る 昔話絵本と創り手たち」
絵本『こぶじいさま』(注4)を例に絵本を作る過程を紹介している。
p.229-260「九 昔話絵本とその可能性 絵本『三びきのこぶた』をめぐって」
p.229-247で絵本『三びきのこぶた』(注5)を例に、昔話の絵本化について説明している。

○雑誌記事
資料7
特集 「民話」
p.184-188「採集者から見た民話の再話」(佐々木徳夫)
採集者の視点で「かちかち山」(例:『かちかち山』講談社(注6)、『かちかちやま』ポプラ社(注7))や「なら梨とり」(例:『日本民話選』岩波書店(注8)、『なしとりきょうだい』ポプラ社(注9))の再話について書籍を比較しながら考察している。

資料8
特集 「日中昔話の比較」
p.119-133「民話と絵本」(松谷みよ子)
著者の作った昔話絵本を例に昔話を絵本にするまでの過程を説明している。

資料9
p.5-8「「いまむかしえほん」にこめた思い―昔話絵本制作の覚え書き―」(広松由希子)
絵本作家の視点から昔話絵本の作成過程を紹介している。

資料10
p.26-31「昔ばなし絵本のこと」(金井田英津子)
画家の視点から昔話絵本を作った感想が述べられている。

●昔話の再話に関する資料

○図書
【再話者の視点から論じた資料】
資料11
p.247-261「再話の方法」(松谷みよ子)
著者が行った再話の事例や再話にあたって心すべきことをまとめている。

資料12
p.161-172「第三部 ふたたび山を越えて 3 再話について」
著者の再話の方法と文体についてまとめている。原本は1974年に出版された『民話の世界』(注F)。

資料13
p.349-355「第一巻 あとがき 昔話とは何だろう」(おざわとしお)
昔話の特徴を説明しながら、再話について説明している。

資料14
p.349-355「第四巻 あとがき 日本の語り手たち」(おざわとしお)
著者の昔話の採話の経験を基に、再話において大切なことを説明している。

資料15
p.347-353「第五巻 あとがき 『日本の昔話』ができるまで」(おざわとしお)
『日本の昔話』について原話の選び方や再話の方法を紹介している。

資料16
p.355-367「第六章 昔話の語法研究―いま昔話を伝えるために― 二 再話昔話の言葉」
再話の方法として、子どもたちの「日常語」に直す方法を具体的に紹介している。

資料17
p.403-420「昔話の再話について」
日本の昔話の過去の再話の事例を批判しながら、再話において大切なことを説明している。初出は『文学』33巻5号 p.35-43「昔話の再話について」(注G)

【研究者の視点から論じた資料】
資料18
p.187-191「第三章 絵本のたのしみ 7 ジェイコブスの昔話」
p.192-193「同 8 三びきのこぶた」
イギリスの民俗学者ジェイコブスが再話にあたって注意したこと等についてまとめている。

○雑誌記事
資料19
特集 「昔話の再生」
p.28-38「民話の再話―作家と研究者とをつなぐもの―」(吉澤和夫)
著者の体験談をまじえつつ再話について考察している。

資料20
p.36-39「昔ばなし大学再話者協会会員の活動(4) 『氏家の昔話』を発行して」(赤羽久弥)
『氏家の昔話』の再話の進め方を紹介している。

○参考
資料21
再話の方法ではないが、長いテキストを縮める方法が紹介されていたので、参考までに紹介した。
編著者は資料3と同じ。昔話のテキストを語りに向くように縮める方法が紹介されており、テキスト原文と短くしたテキストの対照表が掲載されている。


なお、紹介した資料1~21、注1~9、注A~Gは、全て都立多摩図書館所蔵資料である。このうち、資料2、5~7、11、16、17、注Gは都立中央図書館でも所蔵している。
注1~9は紹介資料で扱っている絵本、注A~Gは紹介資料の初版や初出を示している。

参考文献

タイトル 注記
【資料1】絵本を読む / 松居直/著 / 日本エディタースクール出版部 / 1983.8 <K/726/82/90> p.1-129
【資料2】はじめて学ぶ日本の絵本史 3 /鳥越 信/編 / ミネルヴァ書房 / 2002.7 <RK/726.6/5001/3> p.219-238
【資料3】昔話絵本を考える / 新装版 / 松岡 享子/著 / 日本エディタースクール出版部 / 2002.11 <K/019.5/5023/2002> p.21-114
【資料4】絵本をみる眼 / 新装版 / 松居 直/著 / 日本エディタースクール出版部 / 2004.6 <K/019.5/5064/2004> p.231-285
【資料5】絵本はいかに描かれるか 表現の秘密 / 藤本 朝巳/著 / 日本エディタースクール出版部 / 1999.10 <K/726.6/5028/1999> p.51-77
【資料6】昔話と昔話絵本の世界 / 藤本 朝巳/著 / 日本エディタースクール出版部 / 2000.9 <K/388.0/5047/2000> p.139-174, 229-247
【資料7】雑誌:日本児童文学 19巻 2号 通巻196号 (1973年1月臨時増刊) / 日本児童文学者協会/編 / 日本児童文学者協会 p.184-188
【資料8】雑誌:昔話 研究と資料 21号 (1993年7月) / 日本昔話学会/編 / 三弥井書店 p.119-133
【資料9】雑誌:子どもと読書 393号 (2012年5・6月) / 親子読書・地域文庫全国連絡会/編 / 親子読書・地域文庫全国連絡会 p.5-8
【資料10】雑誌:子どもと昔話 68号 (2016年夏) / 小澤昔ばなし研究所/編 / 小澤昔ばなし研究所 p.26-31
【資料11】研究篇(日本昔話大成 第12) / 角川書店 / 1979 <K/388.1/109/12> p.247-261
【資料12】民話の世界 /松谷 みよ子/[著] / 講談社 / 2014.8 <SK/388.1/5370/2014> p.161-172
【資料13】日本の昔話 1 / おざわ としお/再話 / 福音館書店 / 1995.10 <388.1/3141/1> p.349-355
【資料14】日本の昔話 4 / おざわ としお/再話 / 福音館書店 / 1995.10 <388.1/3141/4> p.349-355
【資料15】日本の昔話 5 / おざわ としお/再話 / 福音館書店 / 1995.10 <388.1/3141/5> p.347-353
【資料16】昔話の語法 / 小沢 俊夫/著 / 福音館書店 / 1999.10 <K/388.0/5010/1999> p.355-367
【資料17】児童文学論 上 瀬田貞二子どもの本評論集 / 瀬田 貞二/著 / 福音館書店 / 2009.5 <K/909.0/5091/1> p.403-420
【資料18】絵本の与え方 / 渡辺茂男/著 / 日本エディタースクール出版部 / 1978.11 <K/019/186/92> p.187-193
【資料19】雑誌:昔話 研究と資料 22号 (1994年6月) / 日本昔話学会/編 / 三弥井書店 p.28-38
【資料20】雑誌:子どもと昔話 70号 (2017年冬) / 小澤昔ばなし研究所/編 / 小澤昔ばなし研究所 p.36-39
【資料21】語るためのテキストをととのえる 長い話を短くする / 松岡 享子/編著 / 東京子ども図書館 / 2014.6 / 新装改訂版 <K/015.8/5021/7>
【注1】七わのからす グリム童話 / グリム/著 / 福音館書店 / 1971 <E/ホ6/10>
【注2】ももたろう / まついただし/ぶん / 福音館書店 / 1965 <E/ア4/56>
【注3】おおきなかぶ / 内田莉莎子/再話 / 福音館書店 / 1962 <E/サ24/3>
【注4】こぶじいさま / 松居直/再話 / 福音館書店 / 1980 <E/ア4/26>
【注5】雑誌:こどものとも 50号 (1960年5月) (三びきのこぶた) / 福音館書店
【注6】かちかち山 / 鈴木寿雄/絵 / 講談社 / 1959.8 <E/420/17>
【注7】かちかちやま / まつたにみよこ/ぶん / ポプラ社 / 1967 <E/セ2/14>
【注8】日本民話選 / 木下 順二/作 / 岩波書店 / 1990.9 <388/440/90>
【注9】なしとりきょうだい / かんざわとしこ/ぶん / ポプラ社 / 1967 <E/エ2/18>
【注A】雑誌:こどもとしょかん 13号 (1982年4月) / 東京子ども図書館 p.2-11
【注B】昔話を絵本にすること / 松岡享子/著 / 東京子ども図書館 / 1981<K/019/167/81>
【注C】雑誌:JBBY 16号 (1980年7月) / 日本国際児童図書評議会 p.21-24
【注D】雑誌:飛ぶ教室 児童文学の冒険 6号 (1983年5月) / 光村図書 p.29-39
【注E】絵本をみる眼 / 松居直/著 / 日本エディタースクール出版部 / 1978 <K/019/156/78>
【注F】民話の世界 / 松谷みよ子/著 / 講談社 / 1974 <K/388.1/181/74>
【注G】雑誌:文学 33巻 5号 (1965年5月) 岩波書店 p.35-43

転記用URL

https://catalog.library.metro.tokyo.lg.jp/winj/reference/search-detail.do?qesid=0010006075&lang=ja

1/1