事例詳細
調査・質問内容
質問番号 | 0010006116 |
---|---|
状態 | 受付済 |
質問日 | 2019/06/13 |
「積読(つんどく)」という言葉はいつから使われているのか。江戸時代からあるとインターネットで見たが、出典がわからない。
図書館からの回答
回答状態 | 公開済 |
---|---|
公開日 | 2022/08/17 |
関連質問番号 |
積読について、残念ながら初出は特定できなかったが、江戸時代の用例は複数見出せた。
調査過程と主な資料を以下に紹介する。なお、資料1,2は都立多摩図書館所蔵資料、それ以外の資料は都立中央図書館所蔵資料である。
また、「国立国会図書館デジタルコレクション」( https://dl.ndl.go.jp/ )において、資料1は図書館・個人送信、資料10はインターネット公開されている。
まず、手がかりを得るためにGoogleをキーワード<積読 江戸時代>で検索すると、情報1の個人ブログ記事が見出せた。
情報1 「「積ん読」の語誌」(OKAJIMA_Akihiro’s blog)
https://okajima-akihiro.hatenadiary.jp/entry/20090107/1231294138
ブログ執筆者の岡島昭浩は、ブログのプロフィール、「researchmap」のマイポータル( https://researchmap.jp/okjm )によると、大阪大学文学研究科教授である。
「転載」の項の「http://www.let.osaka-u.ac.jp/jealit/kokugo/fuseigo/kaken2006.pdf#page=68」を参照すると、『山からお宝 本を積まずにはいられない人のために』掲載の「「積ん読」の語誌」を閲覧できる。
ブログ記事では、前述の記事に載せなかった用例等を紹介している。
情報1の出典のほか、都立図書館蔵書検索、末尾に記載のデータベース類をキーワード<積読><積ん読><積ン読><積置><積而置>等で検索した。
さらに、NDC分類019(読書、読書法)、020(図書、書誌学)、81(日本語)の書架をブラウジングし、辞典類を中心に調査した。
(1)江戸時代の用例
資料1 『日本芸林叢書 第8巻』
江戸時代の随筆や書簡、論考等を収録している。
村田了阿著「一枝餘芳」のp.3に「やけずとも一切經に用はなし昔者訓讀今は積而置」とあり、「積而置」には「ツンドク」とルビをふっている。また、頭注に「天保七年十月二十二日晝淺草寺の輪藏失火あり、若は此の時の事か。」とある。
(国立国会図書館デジタルコレクション 図書館・個人送信 https://dl.ndl.go.jp/info:ndljp/pid/1243493 (コマ番号:286))
資料2 『江戸小咄集 1』
江戸時代の安永から寛政にかけての小咄本13種を翻刻し、収録しています。
1788(天明8)年刊『千年艸』収録の、「大般若」(p.257-258)に「それでは真読ならず、くんどくならず、転読もならねいニよって、こゝニつんどく」とある。また、「つんどく」の注として「積んどく、見せるだけのこと」と記載している。
情報2 「噺本大系本文データベース」(国文学研究資料館)
https://base1.nijl.ac.jp/~hanashibon/
東京堂出版刊行の「噺本大系」の作品を全文検索できるデータベースである。
キーワード<つんどく>で検索すると、『千年草』の記述がヒットし、「大般若」の全文を読むことができる( http://base1.nijl.ac.jp/hanashitext/TextAction.do?bouki=0&saku_no=142&kango=012&sys_han=001&groupId=G0000011&page=116 )。
資料3 『千年草』
東京都立中央図書館特別文庫室所蔵の古典籍である。
複数機関の古典籍の情報や、その画像を横断検索できる「新日本古典籍総合データベース」(国文学研究資料館 https://kotenseki.nijl.ac.jp)にて、本資料の画像を閲覧できる。「大般若」は13-14コマ目に掲載している( https://kotenseki.nijl.ac.jp/biblio/100174241/viewer )。
資料4 『書物語辞典』
p.3「訂正表」に、「99頁 つんどくについては、江戸時代すでに、朗讀、默讀、積置を書の三讀方と稱した。」とあるが、出典は記載していない。
(国立国会図書館デジタルコレクション インターネット公開 https://dl.ndl.go.jp/info:ndljp/pid/1794357 (コマ番号:5))
(2)明治時代の用例
資料5 『日本国語大辞典 第9巻 第2版』
p.505に「つんどく【積読】」の項があり、複数の用例を示している。資料6を出典として、「明治一二年(一八七九)の「東京新誌」に「「つんどく家」「つんどく先生」という語が見られるという」と記載している。
資料6 『森銑三著作集 続編 第12巻』
p.7-215「閑読雑抄」のp.33「ツンドク」の項に、「『東京新誌』という和紙袋綴の小雑誌がある。(中略)ツンドク家またツンドク先生といふ語が、明治十二年に既に行はれてゐたことを知つたのは、ありがたかつた。」と記載している。
資料7 雑誌:『昌平余聞東京新誌』150号(明治12年6月7日)
東京都立中央図書館特別文庫室所蔵の古典籍である。和紙袋綴の雑誌のため、資料5,6の記述の出典と推測する。
p.1オ-3オに「皮相開化積讀先生」の記事があり、「積讀」には「ツンドク」とルビをふっている。
資料8 『森銑三著作集 続編 第10巻』
「明治東京逸聞史」の収録巻である。p.339「つんどく」の項に、「「書籍つんどく者を奨説す」といふ一文が掲げてあつて、音読、黙読以外に、書物につんどくあり、などと見えてゐる。そしてこの「つんどく」といふ言葉を拵へたのは、田尻北雷博士だとしてゐる。」と記載している。出典は、『学燈』三十四・十一、とある。
資料9 『日本俗語大辞典』
p.394に「つんどく(積ん読)」の項があり、「田尻北雷の造語」と記載している。また、用例として、「『学燈』(1901年11月号)「音読、黙読以外に、書物につんどくあり」」と記載している。
これは雑誌『学燈』の改題前誌である『学の燈』54号(1901(明治34)年11月)と推測するが、都立図書館未所蔵のため、内容は確認できなかった。
資料10 『俚諺辞典』
「補遺」のp.58に「積讀法(つんどくはふ)」の項があり、「積んで置く法のつゞまりにて書籍を購ひて讀まず徒に積み置くをいふ。」と記載している。
(国立国会図書館デジタルコレクション インターネット公開 https://dl.ndl.go.jp/info:ndljp/pid/900343 (コマ番号:325))
【調査に使用した主なデータベース類】(都立図書館が契約するデータベースには*を付す。)
・リサーチ・ナビ(国立国会図書館)https://rnavi.ndl.go.jp/rnavi/
・次世代デジタルライブラリー(国立国会図書館)https://lab.ndl.go.jp/dl/
・国立国会図書館デジタルコレクション(国立国会図書館)https://dl.ndl.go.jp/
・CiNii Research(国立情報学研究所)https://cir.nii.ac.jp/
・IRDB(国立情報学研究所)https://irdb.nii.ac.jp/
・Googleブックス(Google)https://books.google.co.jp/
*ジャパンナレッジ Lib (ネットアドバンス)
*雑誌記事索引集成データベース ざっさくプラス(皓星社)
*MAGAZINEPLUS(日外アソシエーツ)
*Web OYA-bunko 公立図書館版(大宅壮一文庫)
*朝日新聞クロスサーチ(朝日新聞社)
*ヨミダス歴史館 (読売新聞社)
*毎索 (毎日新聞社)
*ELDB(エレクトロニック・ライブラリー)
以上、インターネット情報等の最終検索日及び最終アクセス日は2022年7月20日。
参考文献
転記用URL
https://catalog.library.metro.tokyo.lg.jp/winj/reference/search-detail.do?qesid=0010006116&lang=ja1/1