事例詳細
調査・質問内容
質問番号 | 0010006329 |
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状態 | 受付済 |
質問日 | 2021/11/04 |
最高裁判所裁判官の国民審査について、不信任の判事に×印を付ける方式になった歴史や背景を知りたい。
また、この方式の問題点を指摘した文献を知りたい。
図書館からの回答
回答状態 | 公開済 |
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公開日 | 2023/03/17 |
関連質問番号 |
法律分野の事典や概説書を参照した。
また、末尾に記載した蔵書検索、論文検索、判例検索等のデータベースを、<国民審査><最高裁><判事><信任><不信任><最高裁判所裁判官国民審査法>等のキーワードをかけ合わせて検索し、ヒットした資料等を確認した。
該当する資料が多数あったため、一部を紹介する。
1 ×印方式の歴史や背景
資料1
国民審査制度に関する研究書。
p.23-73「第1章 国民審査制度の成立過程」
第2-4節 (p.27-68)に、国民審査の法的根拠である憲法79条や最高裁判所裁判官国民審査法の成立過程について、マッカーサー草案や、国内での討議、GHQとの協議等の経緯が書かれている。
資料2
憲法学のテキスト。
p.427「III 14.2.2 (2)国民審査制 ミズーリ方式」
国民審査制がならったという説がある、アメリカにおける裁判官任用方式の一つ「ミズーリ方式(Missouri Plan)」の概要を紹介している。
資料3
司法制度に関する研究書。
p.64-67「第I部 第3章 三 最高裁判所裁判官の国民審査」
国内における審議過程が概観されている。
情報1
「最高裁判所裁判官国民審査法」(「日本法令索引」)
https://hourei.ndl.go.jp/#/detail?lawId=0000039371&searchDiv=1¤t=1
国民審査の手続等を定める「最高裁判所裁判官国民審査法」の情報を掲載するウェブページ。
「審議経過」のタブから「国会会議録検索システム」に遷移して、国会における審議過程を読むことができる。
「第1回国会 衆議院 司法委員会 第32号 昭和22年9月17日 小委員長報告 p.299-300」で、記号式に至った経緯や、罷免を可とする場合のみ記号を付すとした理由を説明している。
また「第1回国会 衆議院 本会議 第42号 昭和22年10月7日 趣旨弁明 p.511-512(備考:官報号外10月8日)」に「×の記号」との表現がある。
2 ×印方式の問題点を指摘した文献
資料4
憲法学のテキスト。
p.449-451 「第3部 第5章 三 4(1)最高裁裁判官の国民審査」
「×印がつかない白票はすべて罷免を不可とする票に数えられ、棄権票を投じることはできない」(p.450)等の批判を紹介している。
資料5
最高裁判所に関する論文集。
p.200-215「第II部 第1章 最高裁判所審理の現状と課題」(市川正人)
罷免の可否を判断できず無記入になった票も罷免を可としない票として扱われる点や、特定の裁判官についてだけ棄権することができない点を指摘している。
資料1(前掲)
p.25-27「第1章 第1節 現行の国民審査制度のあり方 現行制度の問題点」
何も記載しないで投票した場合、棄権の意思表示ができない点と、個別的棄権が行使できない点等を指摘している。
資料6
元最高裁判所裁判官の著書。
p.41-44「第一部 最高裁判所判事として III 開かれた法廷 一 国民審査」
〇を書いたものが無効になる点や、審査対象の一部の裁判官について棄権することができない点を指摘している。
資料7
判例雑誌。
p.388-389「IV 178 最高裁判所裁判官の国民審査」(倉田玲)
「よく知らない裁判官について可否の判断を保留する棄権ができない仕組み」(p.388)等を理由に国民審査の効力が争われた裁判(最高裁昭和27年2月20日大法廷判決)について、事実の概要、判旨、解説を掲載している。
情報2
「最高裁判例 昭和24(オ)332 最高裁判所裁判官国民審査の効力に関する異議」(「裁判例検索」)
https://www.courts.go.jp/app/hanrei_jp/detail2?id=57143
資料7のほか、多数の資料で参照されている判例。全文をPDFで公開している。
【調査に使用した主なデータベース】
・「都立図書館蔵書検索」(東京都立図書館)https://catalog.library.metro.tokyo.lg.jp/winj/opac/search-detail.do?lang=ja
・「NDL ONLINE」(国立国会図書館)https://ndlonline.ndl.go.jp/
・「CiNii Research」(国立情報学研究所)https://cir.nii.ac.jp/
・「日本法令索引」(国立国会図書館)https://hourei.ndl.go.jp/
・「国会会議録検索システム」(国立国会図書館)https://kokkai.ndl.go.jp/
・「裁判例検索」(裁判所)https://www.courts.go.jp/app/hanrei_jp/search1
・「法情報総合データベース(D1-Law.com)」(第一法規)*当館契約データベース、以下同
・「判例秘書INTERNET」(LIC)
以上のインターネット情報等の最終検索及び最終アクセス日は、すべて2023年3月1日である。
参考文献
転記用URL
https://catalog.library.metro.tokyo.lg.jp/winj/reference/search-detail.do?qesid=0010006329&lang=ja1/1