事例詳細
調査・質問内容
質問番号 | 0010007404 |
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状態 | 受付済 |
質問日 | 2023/12/25 |
お酒の「ハイボール」について、名前の由来を知りたい。
図書館からの回答
回答状態 | 公開済 |
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公開日 | 2024/03/26 |
関連質問番号 |
辞典・事典類やお酒に関する資料、インターネット情報等を確認した。
「ハイボール」の名前の由来は諸説あるようで、複数の説が見出せた。
調査過程、紹介資料・情報は以下のとおり。
1 辞典・事典類
言語辞典や百科事典を見ると、そのことばの語源や由来について記載されている場合がある。
都立図書館所蔵の辞典・事典類を調査した。
また、辞書類が横断検索できるデータベース「ジャパンナレッジ Lib」(ネットアドバンス)を、キーワード<ハイボール><high ball>で検索した。
資料1 『広辞苑 [2]』(た-ん)第7版
p.2316「ハイボール」に「ウィスキー・ジンなどをソーダ水などで割った飲料。多く氷を浮かべて飲む。本来、丈の高いグラスを用いるからという。」とある。
資料2 『日本大百科全書 18 にほんけ-はな』
p.550「ハイボール」(原昌道)に「ハイボールの語源には定説がない。アメリカの俗語で、列車の進めの合図に金属製の玉を高く掲げることをハイボールというところから、「進め」を「酔いのスタート」にもじったり、それがさらに転じて飲み物の呼称になったという説がある。」とある。
資料3 『日本国語大辞典 第10巻』(な-はわん)第2版
p.965「ハイ‐ボール」に「本来、背の高いグラスに入れて飲むところからといわれている。」とある。
資料4 『ランダムハウス英和大辞典』第2版
p.1262-1263「high・ball」に「1 ((主に米)) ハイボール:ウイスキーをソーダ、ジンジャーエールなどで割った飲み物。2[鉄道](1)(手・ランプでする)発射の合図(中略)(2)列車に全速力で進めという合図。(3)急行列車。(以下略)」「[1897. 米 名詞2は金属球をさおに高く掲げて発車の合図としたことから 名詞1は、おそらく背の高いグラスを鉄道のハイボールのように高く掲げて乾杯したため]」とある。
2 お酒に関する資料
都立図書館蔵書検索を、キーワード<ハイボール><ウイスキー><語源><由来><じてん>、件名<ウイスキー>を掛け合わせて検索し、ヒットした資料を調査した。
2-1 複数の説が記載されている資料
資料5 『スコッチウイスキーの薫香をたどって』
p.67-73「第I部 個性あるスコッチの世界 第11章 スコッチをどう飲むか?」
「デュワーズ(Dewar's)のホームページでは、ハイボールの起源は1891年のニューヨークで、創業者トミー・デュワーズがサロンでスコッチを注文したときにグラスが低かったので「もっと背が高いグラスを」ということで"high ball"と言ったことに由来する、と紹介されている(本書執筆時点では)。」(p.70)、「サントリーのホームページでは、スコットランドのゴルフ場で当時珍しかったウイスキーソーダ割りを試しているところで高々と打ち上げられたゴルフボールが飛び込んできたのが由来である、とも説明されている」(p.70)、「他には、アメリカのセントルイスの機関車の信号係がバーボンのソーダ割りが好物であり、出発の合図としてボールを高いところに打ち上げる信号機を操作する際、その合図のたびにバーボンソーダを飲んでいた、というバーボン由来説もある(ウイスキーソーダを意味する「ハイボール」という語が文献上登場したのは1898年のNew York Journalであるが、それ以前のアメリカには、機関車の運転手が出発の合図としてボールを高い位置に吊り上げる信号機がすでに存在していた)。」(p.70-71)という記載がある。
資料6 『スコッチ・ウィスキー雑学ノート』
p.110-112「第3章 酔い方指南――いかに飲み、いかに愛でるか 水割り、ハイボール、オンザロックにストレート」
p.111「ハイボールの語源にはいろいろ説がある。スコットランドのゴルフ場で、ソーダ割りを飲んでいた人のグラスにボールが飛び込んだという説。セントルイスの鉄道でソーダ割りの好きな信号係が、ゴーサインに上げる気球に見立て、飲むたびに「ハイボール」と言っていたのが広まったという説。あるいはソーダの発する泡をボールに見立てたという説など(以下略)」という記載がある。
資料7 雑誌『旅行読売』 853号(2018年3月臨時増刊)
p.62-63「第2章 vol.26 いきなり飛んできた高いボールがハイボールの由来」
ハイボールの語源は諸説あるとしたうえで、スコットランドのゴルフ場説、アメリカの鉄道の信号に由来する説、ソーダの泡が次々に浮かび上がってくる様子をボールに見立てた説を紹介している。
資料8 『ウイスキーハイボール大全』
p.6「どうしてハイボールと呼ばれるのか」
語源については諸説あるとしたうえで、スコットランドのゴルフ場説、19世紀初頭のアメリカ鉄道説、ソーダの泡がグラスの中で上昇する様子から名付けられた説を紹介している。
資料9 『衣食住語源辞典』
p.250「ハイボール」
炭酸の泡がグラスの中を高く上昇する様子説、19世紀アメリカの大陸横断鉄道建設中に用いた気球説、イギリスのゴルフボール説を紹介している。
資料10 『知識ゼロからのハイボール入門』
p.14-15「第1章 こっそり聞きたいハイボールの新常識 【語源・ルーツ】Q ハイボールは、いつ、どうやって生まれたの?」
「ハイボールの誕生秘話は諸説ある。」(p.14)としたうえで、アメリカの鉄道起源説、イギリスのゴルフ場起源説等を紹介している。
資料11 『世界の酒日本の酒ものしり事典』
p.195「ハイ・ボール High Ball」
「ハイボールの語源については、今ひとつはっきりしない」としつつ、「一八世紀、イギリスでゴルフを楽しんでいた男が何気なしにウイスキーの入ったコップにソーダ水をついで飲んだところ、ひどくさわやかな気分になった。その勢いでクラブを握ってショットした結果、みごとホール・イン・ワンできたことから」、あるいは「アメリカで汽車を給水場で止める際、客にソーダ割のウイスキーを振舞った。その際、汽車を止める合図として機関士が先にボールが付いた棒を高く掲げたことから」ソーダ割ウイスキーをハイボールと呼ぶようになった、という二つの説を紹介している。
2-2 特定の説が記載されている資料
資料12 『食のことば由来事典 食材・料理・飲み物』
食に関することばとその由来をまとめた事典である。
p.334「ハイボール highball」に、「1890年代についたその名は、背の高いグラスを使うことに由来すると一般的にいわれている。」との記載がある。
資料13 『酒林雑話』
p.182-183「第七 酒に因む珍談奇話 其二十六「ハイボール」の由来」
ハイボールの由来について、イギリスのゴルフ場のスタンドバーでの出来事を由来とする挿話を紹介している。
なお、この資料は、国立国会図書館デジタルコレクションにて国立国会図書館内/図書館・個人送信限定で公開されている。
https://dl.ndl.go.jp/pid/3446833/
(該当箇所のコマ番号:111)
3 インターネット情報
資料5をもとにインターネット情報を検索し、ヒットした記事を確認した。(最終検索日:2024年2月8日)
情報1
「お客様センター Q「ハイボール」の名前の由来を教えてください。」(サントリーホールディングス)
https://www.suntory.co.jp/customer/faq/002523.html
サントリーホールディングスのウェブサイトである。
「「ハイボール」の名前の由来の中で一番有名なのは、スコットランドのゴルフ場で当時珍しかったウイスキーソーダ割りを試している所へ、高々と打ち上げられたボールが飛び込んできて、「これがハイボールだ!」と言ったという説です。」とあるほか、19世紀のアメリカの鉄道に関しては「高い鉄塔に気球を吊し、それを信号係が上に高く掲げるとGOのしるしになったという説」と「セントルイスの信号係にウイスキーのソーダ割りが好きな人物がいて飲むたびに"ハイ・ボール"といったところから、この名がついたという説」、また「ソーダから上昇する泡をボールに見立てて、ハイボールと呼んだという説」について記載がある。
情報2
「Drinks」(Dewar's)
https://www.dewars.com/whisky-drinks/
当該ウェブサイトは閲覧に年齢制限がある。
「Drinks」のページのトップに「HIGHBALL PIONEER」とあり、「In 1892 while out with friends in New York, Tommy Dewar asked for his whisky to be served in a tall glass, along with soda and ice - and so the ‘Original Highball’ was born, and became the perfect drink to enhance the smoothness of our whisky.」という記載がある。
情報3
「New York journal and advertiser (New York [N.Y.]), September 4, 1898」(Library of Congress)
https://www.loc.gov/item/sn83030180/1898-09-04/ed-1/
資料5に記載がある「1898年のNew York Journal」の記事と思われる。
16面の中段「NEW DRINKS. How and Why They Are Invented by Barkeepers.」という記事に、次のようなかたちで「ハイボール」の語が登場する。
「For days he may come in and order his regular tipple, be it a high ball, a rickey or something equally old(以下略)」
情報4
「デュワーズ ハイボールの起源 新CMリリース!!在日ファンクを起用したデュワーズ 新CMを4月22日(水)から全国オンエア」(PR TIMES)(2020年4月22日)
https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000043.000001172.html
ハイボールの起源について以下の記載がある。
「1891年、創業家ジョン・デュワーの息子 トミー・デュワーがニューヨークを訪れた際、現地のバーに友人と一緒に訪問。ウイスキーをオーダーしたところ背の低いグラスで提供されました。その際にトミーは「もっと背の高い(=英語:high)グラスで提供してくれ、そうすればもっと楽しめる(=英語:have a ball)」と言い、highとhave a ballを掛け合わせ「ハイボール」が生まれたといわれています。※米国ジ・イブニング・ワールド紙1905年1月6日夕刊記事より」
情報4の記載をもとに、ジ・イブニング・ワールド紙1905年1月6日夕刊の記事を検索した。
情報5
「The evening world (New York, N.Y.), January 6, 1905, (Evening Edition)」(Library of Congress)
https://www.loc.gov/item/sn83030193/1905-01-06/ed-1/
8面の左上に「FOUNDER OF THE HIGH BALL HERE.」という記事がある。
【調査したデータベース類】
「都立図書館蔵書検索」(東京都立図書館)https://catalog.library.metro.tokyo.lg.jp/winj/opac/search-detail.do?lang=ja
「Google Books」(Google)https://books.google.co.jp/
「COLLECTION Chronicling America Historic American Newspapers」(Library of Congress)https://www.loc.gov/collections/chronicling-america/about-this-collection/
「ジャパンナレッジ Lib」(ネットアドバンス)*当館で契約しているデータベース
参考文献
転記用URL
https://catalog.library.metro.tokyo.lg.jp/winj/reference/search-detail.do?qesid=0010007404&lang=ja1/1