事例詳細
調査・質問内容
質問番号 | 0010007969 |
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状態 | 受付済 |
質問日 | 2024/05/11 |
日本語における小ささを表す単位について知りたい。
分,厘,毛,糸,...,虚空,清浄と10^-1〜10^-21までは見た。
Wikipediaには2006年頃からそれに続く阿頼耶(あらや)、阿摩羅(あまら)、涅槃寂静(ねはんじゃくじょう)の記載があったようだが、出典がなくいつ頃から使われ出したものなのかわからない。
(1)虚空、清浄までの数詞について記載のある資料
(2)阿頼耶、阿摩羅、涅槃寂静について記載のある資料
があれば教えてほしい。
※10^-1は10の-1乗(=0.1)を表す。以下、小数の表記は10^-nとする。
図書館からの回答
回答状態 | 公開済 |
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公開日 | 2024/08/29 |
関連質問番号 |
都立図書館蔵書検索を件名<数学 辞典><度量衡 辞典>やキーワード<単位 じてん><塵劫記><算学啓蒙><数詞>等で検索した。
また「レファレンス協同データベース」で<小数><命数法>等で検索しヒットした事例を参考にした。
(1)虚空清浄までの数詞について
虚空清浄について、「虚空」「清浄」でまとめられているものと、「虚」「空」「清」「浄」とそれぞれ分かれているものがある。
・清浄を10^-21としている資料
資料1『単位の辞典』
p.100「せいじょう 清浄」
「塵劫記に出てくるもっとも小さな数で、(中略)「現代の記法」で10^-21に相当すると考えられる」とある。
資料2『新数学事典』
p.984「付録 数表 23.昔の数字 日本」
数詞が一覧表にまとめられている。
「空虚」は10^-20、「清浄」は10^-21。
資料3『日常の数学事典』
p.47-48「II A-8 命数法 ー大きい数と小さい数の呼び方ー」
吉田光由『塵劫記』以後、日本での数の呼び方は四桁進法に統一され、整然としたものになったとあり、表にまとめられている。
「空虚」は10^-20、「清浄」は10^-21。
資料4『数の単語帖』
p.81-82「数詞」
位を表す数詞が表にまとめられている。
「空虚」は10^-20、「清浄」は10^-21。
資料5『数の漢字の起源辞典』
p.73-78「第一章 漢数字の起源 小数の起源」
小数の漢数字について書かれており、「分」(0.1, 1/10)から「虚空」(1/10^20)、「清浄」(1/10^21)まで記載あり。「分」から「漠」までは漢字の意味が書かれている。
・「虚」を10^-20、「空」を10^-21、「清」を10^-22、「浄」を10^-23としている資料
資料6『図解単位の歴史辞典』
p.259「めいすうほう 命数法」
小数の命数法として「分」から「浄」までの数詞が記載されている。『塵劫記』、『算法統宗』による進数の違いにも言及している。
p.260 表「大数と小数」
『塵劫記』、『算法統宗』の数詞と値が表にまとめられている。
『塵劫記』では、「虚」は10^-20、「空」は10^-21、「清」は10^-22、「浄」は10^-23。『算法統宗』では、「虚」は10^-104、「空」は10^-112、「清」、「浄」は空欄である。
資料7『単位171の新知識』
p.36「第1章 単位とはなにか 位取りの名称 小さな数の位取り」
小数の位取りの単位が表にまとめられている。
「虚」は10^-20、「空」は10^-21、「清」は10^-22、「浄」は10^-23。「小数の日本語表記には諸説ある」とある。
・その他の表記の資料
資料8『単位の辞典』改訂4版
資料1の改訂版。
p.547-548「「塵劫記」(わが国初の算術書)」
「小数の命数法」という項目に「分」から「浄」までの数詞の記載あり。
p.167「せい 清」
「ひじょうに小さい数」とあり、『塵劫記』によれば10^-22、『算法統宗』では10^-120になると思われるとある。
なお、「浄」の項目は見出せず。
資料9『トコトンやさしい単位の本』
p.28-29「第1章 単位は古代から存在していた 10 大きな桁数を文字で書く知恵」
『算法統宗』を翻訳したといわれる『塵劫記』に出てくる文字を紹介している。
「虚空」は10^-20、「清」は10^-21、「浄」は10^-22。
資料10『数学用語と記号ものがたり』
p.4-7「第I部 数と計算に関する用語・記号 1. 大数と小数の名称の由来 最小の数は塵」
『塵劫記』にでてくる小数の名として、「分」から「埃」までが紹介され、『算法統宗』の「塵」の下にあるものとして、「塵」から「清浄」までが紹介されている。
この他、『倶舎論』にある「極微塵」等の単位を紹介している。
(2)「阿頼耶」、「阿摩羅」、「涅槃寂静」について記載がある資料
上記の資料に加え、「Googleブックス」を<涅槃寂静 小数>や<涅槃寂静 命数法>で検索した。
資料11『天才たちが愛した美しい数式』
p.97-100「第3章 関孝和 世界のπマニアが挑戦しつづける円周率」
p.100に『塵劫記』の初版に登場した単位として小数の単位が紹介されている。
「分」から「清浄」までに加え、「阿頼耶」、「阿摩羅」、「涅槃寂静」が記載されている。
資料12『図解よくわかる単位の事典』
p.102-103「第3章 質量など 参考 命数法」
小数の名称が一覧になっている。「分」(10^-1)から「清浄」(10^-21)に加え、「阿頼耶」(10^-22)、「阿摩羅」(10^-23)、「涅槃寂静」(10^-24)が記載されている。「※大数・小数の日本語表記には、諸説あります。」という注意書きがある。
資料13『数える・はかる・単位の事典』
p.248「付録 日本の命数法」
小数の名が表にまとめられている。「分」(10^-1)から「清淨」(10^-21)に加え、「阿頼耶」(10^-22)、「阿摩羅」(10^-23)、「涅槃寂静」(10^-24)が記載されている。「※資料によって数詞が異なるものもあるが、ここでは『塵劫記』『算学啓蒙』などに著されているものを参考に、一般的なものを記した。」という注意書きがある。
資料14『単位図鑑』
p.16-17「第1章 単位って何だろう? 大きな数と小さな数のあらわし方」
接頭語に対応した数詞が挙げられている。
「ゼプト(z) 清浄 10^-21」、「ヨクト(y) 涅槃寂静 10^-24」が記載されている。
資料15『おもしろくてタメになる単位と法則事典』
p.28-29「1 世界共通で定められた「基本単位」 コーヒーブレーク メガやギガってどんな意味?」
接頭語に対応した和名が挙げられている。「10^-21 セプト z 清浄 0.000 000 000 000 000 000 001」、「10^-24 ヨクト y 涅槃寂静 0.000 000 000 000 000 000 000 000 001」が記載されている。
参考文献のうち資料1~8,10~13は都立中央図書館所蔵資料、資料9,14,15は都立多摩図書館所蔵資料である。
このほか、「国立国会図書館デジタルコレクション」をキーワード<涅槃寂静 小数>やNDC分類<410(数学)><609(度量衡,計量法)>をかけ合わせて検索したが、小数の単位として「涅槃寂静」等を紹介している資料は見出せなかった。
また、『塵劫記』や『算法統宗』、『算学啓蒙』に関する資料を調査したが、「阿頼耶」、「阿摩羅」、「涅槃寂静」について記載がある資料は見出せなかった。
インターネット情報の最終確認日は2024年7月26日。
【調査した資料】
「日本語の漢数詞の命数法の歴史と累進法」(宮田義美) 津田塾大学数学・計算機科学研究所:https://tsadahiro.github.io/sugakushi/sympo24/
「算法統宗と塵劫記―程大位逝世三八〇年記念講演論文(1)―」(鈴木久男) 国士館大学学術情報リポジトリ:https://kokushikan.repo.nii.ac.jp/records/8515
「解説:算学啓蒙について」(森本光生) 『数学史研究』 201号(2009年4〜6月) 日本数学史学会(所蔵館:中央 請求記号:/スウカクシケンキユウ// 資料コード:5016937082)p.1-23
『『塵劫記』初版本 影印、現代文字、そして現代語訳』 吉田 光由/著, 佐藤 健一/訳・校注 研成社 2006.4(所蔵館:中央 請求記号:/419.1/5043/2006 資料コード:5016723845)
『江戸のミリオンセラー『塵劫記』の魅力 吉田光由の発想』 佐藤 健一/著 研成社 2000.2(所蔵館:中央 請求記号:/419.1/5003/2000 資料コード:5000522265)
『塵劫記を読みとく百科 江戸時代の大ベストセラー和算書の世界』 佐藤 健一/著 丸善出版 2021.9(所蔵館:中央 請求記号:/419.1/5086/2021 資料コード:7114806696)
ほか
【調査に使用したデータベース類】
・国立国会図書館サーチ(国立国会図書館)https://ndlsearch.ndl.go.jp/
・国立国会図書館デジタルコレクション(国立国会図書館)https://dl.ndl.go.jp/
・レファレンス協同データベース(国立国会図書館)https://crd.ndl.go.jp/reference/
・CiNii Research(国立情報学研究所)https://cir.nii.ac.jp/
・Googleブックス(Google)https://books.google.co.jp/
・J-STAGE 科学技術情報発信・流通総合システム(科学技術振興機構)https://www.jstage.jst.go.jp/browse/-char/ja
【参照したレファレンス事例】
「分、厘、毛のような小さい数が載っている本。」https://crd.ndl.go.jp/reference/detail?page=ref_view&id=1000084341
「億や兆よりも大きな数の読み方を知りたい。」https://crd.ndl.go.jp/reference/detail?page=ref_view&id=1000048139
「数の数え方で、万、億、兆、京・・・無量大数まで載っている資料はあるか。」https://crd.ndl.go.jp/reference/detail?page=ref_view&id=1000323295
参考文献
転記用URL
https://catalog.library.metro.tokyo.lg.jp/winj/reference/search-detail.do?qesid=0010007969&lang=ja1/1