事例詳細
調査・質問内容
質問番号 | 0010007989 |
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状態 | 受付済 |
質問日 | 2024/06/28 |
インターネット上に江戸川乱歩が探偵をしていたという情報があるが、デマだと思う。典拠になるような資料があるのか。
図書館からの回答
回答状態 | 公開済 |
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公開日 | 2024/08/29 |
関連質問番号 |
都立図書館蔵書検索をキーワード<江戸川乱歩 年譜>や件名<江戸川乱歩>でヒットした資料を調査。また、検索エンジンやオンラインデータベースを<江戸川乱歩><岩井三郎>等で検索した。
江戸川乱歩が探偵をしていたという記述の典拠となる資料を見つけることができなかった。
【江戸川乱歩の著作】
資料1・2掲載の随筆「私の探偵趣味」や、資料3に江戸川乱歩が岩井三郎の探偵事務所の面接に行ったことが書いてあるが、採用されたという記述はなかった。
資料1『悪人志願』
p.14-19「私の探偵趣味」
「これもほとんど一昔前になるけれど、岩井三郎氏の探偵事務所で探偵を募集したことがある。その時私は臆面もなくノコノコと出掛けて行ったものだ。(中略)その結果は残念ながら不採用だったが、もしあの時探偵になっていたら、どんなものが出来上がったかと、おかしくてならぬ。」(p.19)
この随筆の初出は、「大衆文芸」大正15年6月号であるが、東京都立図書館には所蔵がない。
資料2『江戸川乱歩全集 第30巻』
p.90-94「私の探偵趣味」
不採用であった旨の記述なし。巻末の解題に、校異が示されており、版によっては不採用だった旨が記載されていることが分かる。(p.808-809)
収録される資料によって最後の一文に不採用だった旨が書かれているものとそうでないものがあることが分かるが、採用されたと書いてあるものは見つからなかった。
資料3『江戸川乱歩全集 第28巻』
大部であるため、上京してから小説家デビューするまでの部分を確認。p.64に、大正8(1919)年頃に、岩井三郎探偵事務所を訪ねたことが書かれている。「よく考えておくからということで追い返されたが、結局採用の通知は来なかった」と書いている。
資料4『私の履歴書 第3集』
p.33-50「江戸川乱歩」
職を転々としていたことは書かれているが、探偵をしていたという記述はない。
【江戸川乱歩関連資料】
資料5『江戸川乱歩大事典』
p.567-570「探偵・岩井三郎」
乱歩が探偵事務所に所属していた等の記述はなく、面接についての記述もない。
資料6『江戸川乱歩語辞典』
p.12-17「マンガ RANPO HISTORY」
江戸川乱歩の生涯を紹介する漫画。「ちなみに、私立探偵になろうともしましたが、これは面接で落とされました。」(p.13)という記述がある。
p.35「岩井三郎探偵事務所」
江戸川乱歩が岩井三郎探偵事務所の就職面接を受けたが不採用になったという記述がある。
【年譜】
以下の資料に掲載された年譜を確認したが、探偵をしていたとの記述なし。
資料7『ちくま日本文学全集 019』
p.461-476「年譜」
資料8『江戸川乱歩アルバム』
p.196‐203「年譜」
資料9『江戸川乱歩とその時代』
p.105-109「略年譜」
大正8年の項に「私立探偵岩井三郎の事務所を訪ねて、採用を願い出る。」という記載あり(p.106)
【人物事典等】
資料10『日本近代文学大事典 第1巻』
p.229-230「江戸川乱歩」
探偵をしていたという記述なし。
資料11『日本近現代人物履歴事典』
p.101「0535 江戸川乱歩」
江戸川乱歩の履歴を掲載。岩井三郎探偵事務所やその他の探偵事務所に勤めたという記述なし。
【インターネット情報】(最終アクセス日:2024年7月24日)
インターネット上の情報1を確認すると、質問者の確認したという通り、探偵として勤務していたと書いているが、出典は不明。
また、情報2はフィクションとして江戸川乱歩が探偵をするドラマに関する情報。
情報1「江戸川乱歩」(Wikipedia)
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E6%B1%9F%E6%88%B8%E5%B7%9D%E4%B9%B1%E6%AD%A9
概要部分に「自らも実際に探偵として、岩井三郎探偵事務所(ミリオン資料サービス)に勤務していた経歴を持つ。」と記載があるが、出典は書かれていない。
情報2「「どエラい企画を通してくれましたね...」と言われた私が土曜ドラマ「探偵ロマンス」を作るまで(大嶋慧介)(2023年2月6日)|関西ブログ」(NHK)
https://www.nhk.or.jp/osaka-blog/479229.html
NHK大阪放送局でディレクターが、平井太郎(のちの江戸川乱歩)の登場するテレビドラマ「探偵ロマンス」の企画がどのように出来上がったかを書いている。
江戸川乱歩が探偵を志願したが採用通知は来なかったらしいという情報から、もし探偵になっていたらと想像して企画を立てたという記述がある。
「乱歩は当時25歳。推理小説オタクだった彼は「推理力には自信がある」と探偵を志願したらしいのです。どうやら採用通知はこなかったみたいですが、僕はこれを知ってどんどん妄想が膨らんでいきました。「もし江戸川乱歩が、そのまま探偵になっていたとしたら・・・・・・?」」
【調査に使用したデータベース等】(都立図書館で契約しているデータベースには*を付す。)
「Google」(Google)
「ジャパンナレッジLib」(ネットアドバンス)*
「WHOPLUS」(日外アソシエーツ)*
参考文献
転記用URL
https://catalog.library.metro.tokyo.lg.jp/winj/reference/search-detail.do?qesid=0010007989&lang=ja1/1