調査・質問内容

質問番号 0010008484
状態 受付済
質問日 2023/04/24

1950年に刊行された光風社の「推理小説双書」シリーズに、「ペトロフ事件」という作品が収録されているか確認してほしい。
著者は鮎川哲也(ペンネーム)または中川透(本名)となっているはずである。

図書館からの回答

回答状態 公開済
公開日 2025/03/12
関連質問番号

1 都立図書館では、1950年刊行の光風社の単行本は未所蔵で、他機関での所蔵も確認できなかった。
2 作品初出となる資料1『別冊宝石』(1950年4月)には、「中川透」名義で掲載されていた。
3 資料2『日本古書通信』(2024年4月)によれば、「本作が単行本化されたのは、昭和三十五年に光風社からになる」とあるため、1950(昭和25)年刊行のものは存在しない可能性がある。

資料1 雑誌『別冊宝石』3巻 2号 通巻8号 (1950年4月)
p.8-65に「中川透」名義で「ペトロフ事件」が掲載されている。

資料2 雑誌『日本古書通信』89巻 4号 通巻1137号 (2024年4月)
p.7「リレー連載ミステリ懐旧三面鏡その三十一《二種類のペトロフ事件》」小野純一
「終戦後、引き揚げ時に紛失した原稿を一から書き直した本作が、昭和二十五年の雑誌『宝石』の百万円懸賞(長篇部門)に第一席入選し、本格デビューとなる(このときは、まだ本名の<中川透>名義)。しかし、出版者との関係がこじれてしまい、単行本化はされなかった。本作が単行本化されたのは、昭和三十五年に光風社からになる」と記載あり。

<調査過程>
都立図書館蔵書検索をタイトル<ペトロフ事件 推理小説双書>で検索したところ、光風社から1960年に刊行されている資料3は当館で所蔵していたが、1950年刊の所蔵は確認できなかった。
国立国会図書館サーチ及びCiNii Booksにおいても、タイトル及びキーワードの項目で<推理小説双書>で検索したが、1950年刊の所蔵は確認できなかった。

資料3 『ペトロフ事件』( 新・推理小説双書 )
1960年に光風社から刊行され、著者は「鮎川哲也」名義となっている。

鮎川哲也の情報を得るため、人物情報を検索できるデータベース「Whoplus」(情報1)で検索したところ、昭和25年に雑誌『宝石』の懸賞に「ペトロフ事件」を応募し、「中川透」名義でデビューしたという情報があった。
参考となる手がかりを得るため、「Wikipedia」(情報2)でも「鮎川哲也」について検索した。
情報2には、『別冊宝石』(1950年4月)(資料1)に「中川透」名義で「ペトロフ事件」が掲載されているという情報があった。情報の裏付けのため、雑誌記事を検索できるオンラインデータベース「ざっさくプラス」(情報3)でも検索した。

情報1 Whoplus(日外アソシエーツ)
キーワード<鮎川哲也>で検索。「25年本名の中川透で雑誌『宝石』の懸賞小説に応募した『ペトロフ事件』が入選してデビュー」と記載あり。

情報2 「鮎川哲也」(Wikipedia)
( https://ja.wikipedia.org/wiki/%E9%AE%8E%E5%B7%9D%E5%93%B2%E4%B9%9F )
(最終アクセス日:2025年1月25日)
主要作品欄に「ペトロフ事件(1950年4月、『別冊宝石』/1960年11月、光風社) - 鮎川が影響を受けた作家・クロフツの『ポンスン事件』を連想させる表題。初出時は『中川透』名義」と記載あり。脚注には「『ペトロフ事件』(立風書房 1975)解説など」と記載があった。

情報3 ざっさくプラス(皓星社)
論題名<ペトロフ事件>、雑誌名<別冊宝石>で検索。「ペトロフ事件〈小説〉」が 『別冊宝石』(1950年4月)のp.8-65に、「中川透」名義で掲載されているということを確認した。

また、都立図書館蔵書検索の雑誌記事検索で、キーワード<ペトロフ事件>と検索しヒットした資料2に、「ペトロフ事件」の単行本化は1960年に光風社からであると記載があることを確認した。

このほか、情報2の脚注に記載されていた資料4の解説のほか、鮎川哲也の年譜が掲載されている資料5、作品目録と著者目録が掲載されている資料6を確認したが、1950年刊行の光風社の単行本に関する情報は確認できなかった。
なお、情報2の脚注に記載されていた『ペトロフ事件』という資料は、都立図書館蔵書検索でタイトル<ペトロフ事件>、出版者<立風書房>と検索したところ、資料4のことであると判明した。

資料4 『黒いトランク』( 鮎川哲也長編推理小説全集 1 )
p.5-114に「ペトロフ事件」が収録されている。
p.343「解説」には、「『ペトロフ事件』は発表のあてもなく、昭和十八年ごろに書かれたが、長篇の部の予選通過作品として、中川透名義で、二十五年四月の『別冊宝石』に載った」と記載あり。

資料5 『鮎川哲也・土屋隆夫・戸板康二』 ( 現代推理小説大系 10 )
p.382-383に鮎川哲也の年譜が載っており、1950年に「四月、中川透名義で『ペトロフ事件』が、『宝石』百万円懸賞の長篇の部に二等入選し、『別冊宝石』に発表」と記載あり。

資料6 『鮎川哲也読本』
p.397の作品目録に「昭和25年<一九五〇年>ペトロフ事件(中略)別冊宝石4」と記載あり。
p.405の著書目録に「ペトロフ事件 昭和35年11月25日 光風社」と記載あり。

【調査に使用したデータベース】
・Whoplus(日外アソシエーツ)
・ざっさくプラス(皓星社)
(どちらも都立図書館で契約しているオンラインデータベースである)

なお、参考文献のうち、資料1~5は都立多摩図書館所蔵資料、資料6は都立中央図書館所蔵資料である。

参考文献

タイトル 注記
【資料1】雑誌:別冊宝石 3巻 2号 通巻8号 (1950年4月) / 宝石社 <7101459485> p.8-65
【資料2】雑誌:日本古書通信 89巻 4号 通巻1137号 (2024年4月) / 日本古書通信社 <7117938877> p.7
【資料3】ペトロフ事件 ( 新・推理小説双書 ) / 鮎川哲也/著 / 光風社 / 1960 </J360/A982/P>
【資料4】黒いトランク ( 鮎川哲也長編推理小説全集 1 ) / 鮎川哲也/著 / 立風書房 / 1975 </J360/ア18/6-1> p.343
【資料5】鮎川哲也・土屋隆夫・戸板康二 / 鮎川哲也/著,土屋隆夫/著,戸板康二/著/ 講談社 / 1972 </J360/5/10> p.382-383
【資料6】鮎川哲也読本 / 芦辺 拓/[ほか]編 / 原書房 / 1998.9 </910.26/ア18/603> p.397、405

転記用URL

https://catalog.library.metro.tokyo.lg.jp/winj/reference/search-detail.do?qesid=0010008484&lang=ja

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