事例詳細
調査・質問内容
| 質問番号 | 0010009291 |
|---|---|
| 状態 | 受付済 |
| 質問日 | 2025/05/31 |
折り畳み傘は日本で発明されたのか、それとも外国か。
折り畳み傘の歴史や概要などを調べたい。
図書館からの回答
| 回答状態 | 公開済 |
|---|---|
| 公開日 | 2025/11/26 |
| 関連質問番号 |
以下の調査方法により、折り畳み傘に関連する記述がある資料・情報を見出した。
発明された場所については、ドイツで発明されたとの記述が複数の資料に見出せた。
なお、回答の本文中で紹介している資料の内、資料2、8は都立多摩図書館所蔵資料、それ以外は都立中央図書館所蔵資料である。
国立国会図書館デジタルコレクションにて、図書館・個人送信限定で公開されている資料はURLを付している。
引用文中、旧字は新字に適宜改めて記載した。
インターネット情報やデータベース等の最終確認日は2025年10月18日である。
(1)事典類で概要を確認
まず、次の2つの百科事典(情報1、2)を当館契約データベース「ジャパンナレッジ Lib」(ネットアドバンス)で確認した。
このほか、都立図書館の蔵書検索や「国立国会図書館サーチ」で、件名<事物起原/事物起源><家庭用品><道具><技術><歴史>やキーワード<日用品><生活道具>等で検索し、身近なものの歴史をまとめた事典(資料1~4)を確認した。
情報1 『日本大百科全書』
「傘」(遠藤武 [ほか])
「現在の傘」の項目に「第二次世界大戦後の日本において、(中略)洋傘は生産を伸ばし、昭和30年代には和傘の生産量を上回るようになった。折り畳み傘、ジャンプ傘(ワンタッチ傘)も普及した。」と記述あり。
続けて、洋傘の素材や骨の数・長さ等についての説明があり、折り畳み傘についても言及がある。
なお、『日本大百科全書』は紙媒体でも刊行されているが、紙の事典には折り畳み傘に関する詳しい記述はない。
・『日本大百科全書 5』 小学館 1985(所蔵館:中央 請求記号:DR/0310/38/5E 資料コード:1120918392) p.121-122「傘」(遠藤武 [ほか])
情報2 『世界大百科事典』
「傘」(菊田隆)
「現代の傘」の項目に「第2次大戦後、洋傘の開発はめざましく、1949年にはアメリカから輸入されたビニルフィルムを用いたビニル傘が売り出され、爆発的人気を得た。53年にはナイロン洋傘地の国産化、54年にはスプリング式折りたたみ傘の開発で、ナイロン生地を用いた折りたたみ傘の全盛時代に入っていった。」との記述がある。
こちらの『世界大百科事典』については、以下の紙の事典でも同様の内容を確認できる。
・『世界大百科事典 5』(カウ-カヘチ)改訂新版 平凡社 2007.9(所蔵館:中央 請求記号:DR/031.0/5020/5 資料コード:5014175250) p.218「傘」(菊田隆)
資料1 『身近なモノの履歴書を知る事典 「モノづくり」誕生物語』
p.62-64「1930年頃登場 折りたたみ傘」
3ページにわたって、折り畳み傘の歴史や概要がまとめられている。
特に、情報2にも記載のあった「スプリング式折りたたみ傘」の開発者が「村田啓一」氏であることや、村田氏が開発した「アイデアル」と名付けられた折り畳み傘について詳しい記述がある。
この他、2002年刊行の本のため新しい情報は載っていないが、「スプリング式」以降に登場した、3段式の「コンパクト型」、三折れタイプの「ミニ型」、「トップレス・ミニ傘」等についても紹介されている。
資料2 『最新モノの事典 身近なモノのしくみと歴史』
児童書だが、p.26-27「折りたたみ傘」に、概要や歴史が写真や図を交えてわかりやすくまとめられている。
歴史については、「1928年にドイツで誕生し」「1949(昭和24)年ごろにはドイツ製をモデルに国産品がつくられ」た等の記述がある(p.26)。
種類については、こちらも2009年刊行の本のため、最新の情報ではないが、「二段式」(2分の1に折り畳めるもの)から、さらに小型化が進み、「三段式」や「四段式」、「五段式」、「トップレス式」等も登場していることなどが紹介されている。
また、「トップレス式」を例に、折り畳み傘の構造や開閉の仕組みも図解されている。
資料3 『身近なモノ事始め事典』
p.168-170「傘をさしても濡れるのは、なぜ?」
p.168に、折り畳み傘について「1928年にドイツのハンス・ハウプトが考案し、4年後に特許を取得、それをドイツの傘メーカーのクニルプス社(Knirps)で商品化したのが最初である。」との記述がある。
資料4 『事物起源選集 9』(ものしり事典 言語、文化篇)
『ものしり事典 文化篇』日置昌一/著 河出書房刊 等の復刻資料。
「ものしり事典 文化篇」のp.22-23に「折り畳み傘の始」の項があり、「昭和二十二年(中略)ごろアメリカから舶来されたのにはじまり、わが国でも東京都日本橋室町の洋傘屋上村彦次郎が製造するようになつたのがはじまりである。」との記述がある。
https://dl.ndl.go.jp/pid/2933524 ※公開されているのは、原本の『ものしり事典 文化篇』
(2)蔵書検索で資料を検索する
都立図書館の蔵書検索や「国立国会図書館サーチ」で、<洋傘><傘><アンブレラ><パラソル><折り畳み/折りたたみ/折畳み/折たたみ><雨具>等のキーワードや、件名<傘><傘 歴史>、分類<589.3*(傘. ちょうちん. 扇. うちわ)>もしくは<589.4*(洋傘. 杖. ステッキ)>等を組み合わせて検索すると、次のような資料がヒットする。
古い資料が多いが、日本における折り畳み傘の歴史について調べることができる。
資料5 『東京洋傘産業史』
https://dl.ndl.go.jp/pid/12044657
東京における洋傘産業の歴史をまとめた資料。折り畳み傘については、例えば、以下の項目がある。
p.160-161「第二部 第二章 第二節 折たたみ傘及び合成繊維の開発(昭和三十年頃~四十年頃)」
p.161-162「第二部 第二章 第三節 折たたみ傘の小型化、軽量化、ジャンプ傘(昭和四十年頃~四十八年頃)」
p.172-176「第二部 第三章 戦後の東京洋傘の流通小史(昭和二十二年~五十年迄)」
p.258「第三部 第一章 第四節 折たゝみ洋傘骨の改良と普及」
資料6 『洋傘ショールの歴史』
https://dl.ndl.go.jp/pid/3442860
日本における洋傘・ショールの歴史をまとめた資料。折り畳み傘については、例えば、以下の項目がある。
p.264-267「第四部 第一章 二、戦後洋傘のうつりかわり」
p.267-268「第四部 第一章 三、折たたみ洋傘全盛時代きたる」
p.275-276「第四部 第一章 八、三段ミニ型洋傘の出現」
資料7 『30年のあゆみ』
https://dl.ndl.go.jp/pid/13061216
日本洋傘骨工業組合連合会の創立30周年記念誌。
明治以降の日本における洋傘の歴史が年表(p.66-72「年表」)でまとめられている。
折り畳み傘については、例えば、以下の記述がある。
p.67「1934年(昭和9) 伊勢丹で二段式折りたたみ傘発売。」
p.68「1956年(昭和31) スプリング式折りたたみ骨が特許取得。」
p.69「1965年(昭和40) コンパクト型、3段式ミニ型洋傘が流行の兆し。」
(3)調査で見つけた本や情報の著者・参考文献、関連資料等を確認する
資料1で紹介されていた、スプリング式折り畳み傘の開発者・村田啓一氏やアイデアルについて調べると、次のような資料が見つかる。
(都立図書館の蔵書検索や「国立国会図書館サーチ」で、キーワード<村田啓一><アイデアル><傘>等を適宜掛け合わせて検索。)
資料8 『傘骨つくって四十年 アイデアル・村田啓一の歩み』
https://dl.ndl.go.jp/pid/2984673
村田啓一氏の伝記。開発経緯について詳しい記述があるほか、開発した製品等の写真も多数掲載されている。
資料9 雑誌『トリガー』19巻 12号 通巻235号(2000年12月)
p.80-82「20世紀解体新書 利便性に優れた「折りたたみ傘」の開発で、その普及に貢献した、村田啓一」
スプリング式折り畳み傘の開発経緯についてまとめられているほか、文章の末尾には、その後、より軽量の「ホック式」やより小さく折り畳める「ミニ型」などより利便性に優れる商品に主役の座を明け渡すこととなった等の記述がある。
資料10 雑誌『日経ベンチャー』 263号(2006年8月)
p.126-129「破綻の真相 アイデアル [東京都台東区/洋傘・傘骨の製造販売] 洋傘業界の革命児 中国パワーの前に力尽きる」
スプリング式折り畳み傘を開発したアイデアルが、中国等から押し寄せる安価な輸入品の前に競争力を失い、倒産したことを報じる記事。
(4)オンラインデータベースで新聞記事・雑誌記事を調べる
例えば、「朝日新聞クロスサーチ」をキーワード<折りたたみ傘><歴史><開発><発売>等を適宜掛け合わせて検索すると、次のような記事がヒットする。
情報3 「(サザエさんをさがして)折りたたみ傘 戦後に普及、あのCMも力」『朝日新聞』2020年6月27日 朝刊 週末be・b03 3ページ
「日本洋傘振興協議会によると、1949(昭和24)年ごろからドイツ製品をモデルにいくつかのメーカーが開発を始め、商品化したという」などと日本における折り畳み傘の開発の歴史や現在の商品等についてまとめられている。
こちらの記事は、以下の縮刷版でも確認可能。
・『朝日新聞』1188号(2020年6月) 朝日新聞社(所蔵館:中央 請求記号:/アサヒシンフン// 資料コード:7113184170) p.1107
(5)インターネット上で調べる
情報3に登場した「日本洋傘振興協議会」のウェブサイト(https://www.jupa.gr.jp/)を確認すると、次のようなページが見つかる。
情報4 「洋傘の歴史」(日本洋傘振興協議会)
https://www.jupa.gr.jp/pages/history
「洋傘全盛期へ 折りたたみ傘ブーム到来」等の項目がある。
記事末尾の「日本の洋傘史の年表」にも折り畳み傘に関する記述がある。
情報5 「JUPA基準詳細」(日本洋傘振興協議会)
https://www.jupa.gr.jp/mark/detail/
「日本洋傘振興協議会規格(Japan Umbrella Promotion Association Standard)《JUPA基準》」を掲載。
「2. 用語の定義」に「折りたたみがさ」や「トップレスかさ」の定義が記載されている。
「3. 各部の名称」の「付図2」では「一般的な折りたたみがさ」と「ミニかさおよびトップレスかさ」の構造が図解されている。
また、「4. 種類」では洋傘の種類が表にまとめられており、折り畳み傘は3つの種類に分けられている。
【この他、確認した主な資料】
■傘・雨に関する資料 ※折り畳み傘に関する詳しい記述は見出せず
・『アンブレラ 傘の文化史』T.S.クローフォード/著, 別宮 貞徳/訳, 中尾 ゆかり/訳, 殿村 直子/訳 八坂書房 2002.8(所蔵館:中央 請求記号:/383.4/5004/2002 資料コード:5004863137)
・『傘 和傘・パラソル・アンブレラ』(INAX booklet) INAX出版 1995.9(所蔵館:中央 請求記号:/3831/3084/95 資料コード:1127920623)
・『日本洋傘歴史と名鑑』今村良之祐/著 今村良之祐 1950(所蔵館:中央 請求記号:/5893/4/50 資料コード:1122741826)
・『雨の事典 空と海と大地をつなぐ』レインドロップス/編著 北斗出版 2001.12(所蔵館:中央 請求記号:/451.6/5015/2001 資料コード:5003682048)
■ものの歴史に関する事典類等 ※折り畳み傘に関する項目は見出せず
・『ものの歴史を知る本 1』(読書案内) 日外アソシエーツ株式会社/編集 日外アソシエーツ 1998.1(所蔵館:中央 請求記号:R/0314/3011/1 資料コード:1128477650)
・『年表で見るモノの歴史事典 上』 ゆまに書房 1995.11(所蔵館:中央 請求記号:R/0314/3006/1 資料コード:1127763924)
・『モノのはじまりを知る事典 生活用品と暮らしの歴史』木村 茂光/著, 安田 常雄/著, 白川部 達夫/著 吉川弘文館 2019.12(所蔵館:中央 請求記号:/031.4/5014/2019 資料コード:7112514692)
・『なんでも「はじめて」大全 人類と発明の物語』スチュワート・ロス/著, 西田 美緒子/訳 東洋経済新報社 2020.12(所蔵館:中央 請求記号:/031.4/5015/2020 資料コード:7113731779)
・『物事のはじまりハ?』チャールズ・パナティ/著, バベル/訳 フォー・ユー 1998.11(所蔵館:中央 請求記号:/0330/3004/98 資料コード:1128698150)※傘の項目はあるが、折り畳み傘については記述が見出せず
・『西洋事物起原』1~4 (岩波文庫) ヨハン・ベックマン/著, 特許庁内技術史研究会/訳 岩波書店 1999.10~2000.3(所蔵館:中央 請求記号:S/034.0/5001/1~4 資料コード:5000095667 [ほか] )
・『ヴィジュアル<もの>と日本人の文化誌』秋山 忠弥/著 雄山閣出版 1997.11(所蔵館:中央 請求記号:/3830/3086/97 資料コード:1128426651)※傘の項目はあるが、折り畳み傘については記述が見出せず
・『生活道具の文化誌 日用品から大型調度品まで』エイミー・アザリート/著, 大間知 知子/訳 原書房 2021.1(所蔵館:中央 請求記号:/383.9/5241/2021 資料コード:7113889095)
・『図説科学・技術の歴史 ピラミッドから進化論まで 上・下』平田寛/著 朝倉書店 1985.4, 1985.6(所蔵館:中央 請求記号:/4023/26/1, 2 資料コード:1122913045, 1122913054)
・『20世紀をつくった日用品 ゼム・クリップからプレハブまで』柏木 博/著 晶文社 1998.11(所蔵館:中央 請求記号:/5020/3029/98 資料コード:1128699603)
・『日本産業技術史事典』日本産業技術史学会/編 思文閣出版 2007.7(所蔵館:中央 請求記号:/502.1/5065/2007 資料コード:5013924920)
【調査したデータベース類】
・「都立図書館蔵書検索」(東京都立図書館)https://catalog.library.metro.tokyo.lg.jp/winj/opac/search-detail.do?lang=ja
・「国立国会図書館サーチ」(国立国会図書館)https://ndlsearch.ndl.go.jp/
・「国立国会図書館デジタルコレクション」(国立国会図書館)https://dl.ndl.go.jp/
・「レファレンス協同データベース」(国立国会図書館)https://crd.ndl.go.jp/reference/
・「ジャパンナレッジ Lib」(ネットアドバンス)*都立図書館で契約しているデータベース(以下同じ)
・「朝日新聞クロスサーチ」(朝日新聞社)
参考文献
転記用URL
https://catalog.library.metro.tokyo.lg.jp/winj/reference/search-detail.do?qesid=0010009291&lang=ja1/1




















